イオン九州株式会社は、GMS(総合スーパー)業態の「イオン」をはじめ、SM(食品スーパー)業態の「マックスバリュ」、DS(ディスカウントストア)業態の「ザ・ビッグ」などの店舗事業を展開するイオングループの企業です。「ランドセル編」と「自転車編」の2本のパラパラ漫画ムービーを制作しました。
インタビュー協力:イオン九州株式会社 営業企画部 プロモーショングループマネージャー 岩田 秀志様
―アトムストーリーにパラパラ漫画ムービーの制作を依頼されたきっかけを教えてください!―
岩田様 私の上司が東京の展示会でアトムストーリーさんのブースに立ち寄った時に、そこで上映されていたパラパラ漫画ムービーを見て、「こんな動画ができないか」と思ったのがそもそものきっかけです。
―その当時、新たな動画コンテンツを必要とする状況があったのですか?―
岩田様 イオン九州の店舗でも、デジタルサイネージの設置が進んでいます。少ない店舗で5、6 台、多い店舗だと20台のモニターが店内の通路沿いに天井吊下げで設置されています。そうした店舗が増える中で、デジタルサイネージで流すための動画コンテンツを作る機会が増えてきたところだったんです。通常だと静止画やお得情報みたいなものを流すことが多いのですが、それらとは趣向を変えて、お客様の心に届く動画を作りたい、と考えていた頃でした。
―パラパラ漫画ムービーを使えば、お客様の心に届くような動画が作れるんじゃないかと感じられたわけですね?―
岩田様 ええ、そうです。その時は、まだ確信はありませんでしたが(笑)
―パラパラ漫画ムービーを制作することが決まった時には、既に「これを作りたい」といった構想などは固まっていましたか?―
岩田様 社内でパラパラ漫画ムービーを作ることは決まっていたんですが、実を言うと何をテーマに制作するかはハッキリと固まっていませんでした。企画の初期段階では「どういう動画が人の心を動かすのか?」と考えながらも、なかなかこれといったアイデアが湧かず、苦労しました。それでも、自分が経験したことや感じたことをそのまま伝えるような方向性でアイデアを練っていけば、お客様に共感してもらえる動画ができるんじゃないかと考えました。
「自分が経験したことや感じたことをそのまま伝えるような方向性」でアイデアを煮詰めて生まれた「ランドセル編」(左)と「自転車編」(右)
―その結果、「ランドセル編」と「自転車編」の2つのパラパラ漫画ムービーを制作されました。先に制作したのは「ランドセル編」でしたが、ランドセルを取り上げようと考えられた決め手は何でしたか?―
岩田様 ランドセルは、現在では年間を通して販売している商品です。15年ほど前までは、年が明けた1月や2月にランドセルの購入が集中していましたが、昨今は購入のピークがどんどん前倒しになってきており、お子さんが小学校に上がる前年のゴールデンウィークやお盆時期に一番売れる商品になっています。年間で売れていく商品なので、全国のイオングループ向けにプロモーション動画やTVCMなども親会社から共通のものが届くのですが、せっかくパラパラ漫画ムービーを制作するチャンスに恵まれたので、「イオン九州独自で、なにかプロモーションツールを作れないか?」と考えました。
―出来上がった「ランドセル編」「自転車編」は、どちらも商品を軸にしながらも、お子さんの成長と共に、家族の思い出が積み重なっていくストーリーになっていました。2つのパラパラ漫画ムービーを通して、伝えたかった想いは何ですか?―
岩田様 「ランドセル編」や「自転車編」を見た保護者の方が、お子さんの成長を見守っていく中で経験するであろう「気持ち」の部分に共感してくれたらいいな、という想いですね。その意味では、商品を売るための単なるPR動画にするのではなく、ランドセルや自転車を買った後に待っている家族のストーリーや時間というか、そういうものを想像してもらえる動画に仕上げたい、と考えていました。
「買った後に待っている家族のストーリーや時間」を想像させるという想いが、「ランドセル編」の最後を飾るキャッチコピーに凝縮されている。
―パラパラ漫画ムービーに登場するエピソードには、ご自身の体験なども反映されていますか?―
岩田様 「ランドセル編」は、自分の家族の出来事を思い返しながら作りました(笑)。一方の「自転車編」は、サイクル部門の担当者が中心になって制作したので、私は内容には深く関わっていません。でも、私自身も自分の子どもに自転車を買ったり、乗り方を教えたりした経験があったので、「自転車編」には感情移入できました。だから、私と同じように共感する人は多くいるんじゃないか、と思いましたね。
岩田様が「私と同じように共感する人は多くいるんじゃないか、と思った」という子どもに自転車の乗り方を教えるシーン。
―完成したパラパラ漫画ムービーは、どのように活用されましたか?―
岩田様 完成したものは、店舗のサイネージや当社のホームページに掲載していました。ホームページの動画はYouTubeにアップしたものをリンクさせているので、必然的にYouTubeでも公開していました。「ランドセル編」は当時、サイネージを設置していた全店で流しました。
―店頭や売り場では、どのように流されていましたか?―
岩田様 「ランドセル編」は、グループの動画を前に付けた形で編集したDVDを作り、配布しました。ただ、売り場でパラパラ漫画ムービーを流す試みが初めてだったので、「本当にこれを見た店舗スタッフやお客様の共感を得られるのか?」という不安もあり、当初は限定店舗のみで案内したんですよ。すると、他の店舗からも「欲しい」という声があがったので、結局、全店(65店舗)に配布しました。「自転車編」も同じようにDVDを配布して、イオンバイクの売り場で流しました。
―パラパラ漫画ムービーの反響や評判はいかがでしたか?―
岩田様 「ランドセル編」を部署内で見せた時に、子どもとケンカした後の場面などで思わず泣いているメンバーがいました。子どもがいる方なら「ここは泣き所になるな」と思うシーンがいくつかあって、私も見返すと泣いてしまうんですが、「この場面で涙腺が緩みました」といった感想を聞くと、こちらの想いが伝わって良かったと安心しましたね。
ケンカした後、泣き疲れて寝ている子どものそばにそっと手紙を置く。
―ここからは、制作過程について振り返っていただきます。はじめに絵コンテを拝見された時の印象はどうでしたか?―
岩田様 こちらから提出していたストーリーに対して、基本的にはこちらのイメージをしっかり汲み、具現化した形で返していただいたので、良かったなと思っています。
―絵コンテと完成した動画の間にギャップはありましたか?―
岩田様 絵コンテでやりとりしながらアニメーションを作っていくのが初めてだったので、ギャップはありました(笑)。絵コンテだけからでは、動画に仕上がった時のイメージはなかなか掴めなかったですね。この絵コンテのシーンがどういう風に動くのかな、と。「自転車編」の時は、「ラントセル編」の経験があったので、なんとなく動画になった時のイメージを浮かべられましたが。
―制作する上で、こだわった部分はどこですか?―
岩田様 「ランドセル編」の後半で、子どもと母親がケンカする場面です。二人の感情の高ぶりや変化にシンクロするように、音楽(BGM)を細かく合わせてもらいました。そこが今回の制作で一番こだわったところですね。
BGMの付け方にこだわった、母と子がケンカをしてから仲直りするまでのシーン
―完成したパラパラ漫画ムービーは、期待通りでしたか?―
岩田様 出来上がりには満足しています。先にも触れましたが、「ランドセル編」は自分の家族のことを考えながら作ったこともあり、思い通りの仕上がりでうれしく思っています。「自転車編」も、サイクル部門の期待通りの出来になっていたと思います。
―これからのアトムストーリーに期待されることはありますか?―
岩田様 なかなか難しいと思いますが、コンテンツ制作だけでなく、完成した動画を何かの媒体や商業施設などのサイネージで上映するみたいな特典・付帯サービスがあるとうれしいですね。
―最後に改めて、アトムストーリーのパラパラ漫画ムービーの良さはどんなところだと思いますか?―
岩田様 今回当社が作ったパラパラ漫画ムービーには、登場人物の音声はなく、動きとBGMだけです。そのため、それぞれのお客様がこの動画を見て感じることは、当然ながら異なってくると思います。しかしその一方で、それぞれの感じ方の中で、その人の心の深いところで共感してもらえる何かはしっかり伝えられていると思います。それがアトムストーリーさんのパラパラ漫画ムービーの良さであり、魅力だと感じます。
―この度は貴重なお話、ありがとうございました。
イオン九州株式会社様の動画はこちらのURLからご覧になれます。―
(取材日2023年11月24日)
編集後記/
今回インタビューさせていただいた中で、制作の初期では「パラパラ漫画ムービーで何を表現したいか決まっていなかった」という言葉が印象に残りました。というのも、多くの企業様が「パラパラ漫画って、なんかいいよね!」と気に入ってくださり、受注をいただくのですが、いざ制作に取り掛かると、イオン九州様と同じように「動画の内容をどうしよう?」と悩まれるケースが少なからずあるからです。
制作では、当社のストーリープランナーがクライアント様とやりとりいたします。時にはお客様の中ではまだしっかりとイメージの輪郭が出来上がっていないアイデアを受け取り、プランナーがストーリーをまとめ、絵コンテなどの具体的なイメージに仕上げていきます。イオン九州様の場合は、ストーリーの骨子を箇条書きにされた原稿をいただき、それを映像化に向けて肉付けいたしました。2本のパラパラ漫画ムービーの制作プロセスを振り返りながら、当社のプランナーの価値を発揮する場面は、まさにこういうところにあるのではないか、と改めて思いました。
また、「ランドセル編」のエピソードは、担当された岩田様のご家庭での出来事を参考にエピソードを構成されたと伺い、頭の中だけで想像を膨らませてつくるものより、実際の体験に基づいたエピソードだったからこそ、より多くに人々に響く内容になったのではないか、と思いました。その「ランドセル編」が、当初は限定店舗だけでスタートし、最終的には全店でご活用いただけたとお聞きし、嬉しくなりました。店舗スタッフの方やお客様に興味を持っていただけたと実感できました。(梅樹/営業)